ひそかに尊敬している人が読んでいたので、『黒死病―ペストの中世史 (INSIDE HISTORIES)』(ジョン・ケリー)を読みました。まるで小説のように読める本で、時間と場所を追ってどのようにペストがヨーロッパを席巻したかが描かれています。
内容の紹介などは割愛して、僕が興味深く思ったのは人口の変動や年齢構成の崩壊、労働力の減衰を通して、後の時代の経済的・科学的・工業的な進展の礎となった可能性がある、ということでした。
現在、経済的先進国(日本も含む)の年齢構成は明らかに生物学的には不均衡です。こうした時代にどのような歴史的展開があるのかは先行きが見えませんが、少なくとも歴史的な前例があることは頭に留めておくと有意義かも知れません。
また、宗教やら人種やら特定の病気やら、いわゆるスティグマの問題も示唆に富みます。どのように偏見が成立し、どのように社会不安を醸成し、どのような暴力的な噴出を見たかということは、14世紀ヨーロッパに限らず現代でも世界各地で起こっています。悲しいけれども人間が集団で生活する以上は「内部」と「外部」をわけないことにはアイデンティティの存続は難しいものです。それでも敢えて外部との接触を持とうとした時に何が出来るのか、考えさせられました。
内/外の区分って、大げさに考えなくともすごく自然に見られるのですよね。例えば「うちの会社」とか日常的に耳にしますし。
2009-02-01
『黒死病』
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