2010-04-13

茶人たちの日本文化史

茶人たちの日本文化史』(谷晃)を、人に触発されて読みました。

僕自身日本文化に精通している訳ではないけれども、若い人間(若いです!)にしては日本の伝統に通じているとは思っています。例えば幼いころには琴を稽古していましたし、育った家庭では日常的に和歌や詩などをネタにして雑談していましたし、主に書物を通じていわゆる「日本文化」には接しているつもりです。

しかし、茶についてはほんの少しの知識と通り一遍の経験しかありません。まあ他の伝統文化についても通り一遍のことしか身につけていないのですが。そんな僕にはとても役に立つ本でした。

茶の湯は村田珠光からはじまり、利休によって大成され、といった作法的茶道本のレベルではなく、茶が日本に伝わったところから話ははじまります。そして平安の貴族階級や僧侶、その後の武家階級や町人に広がっていったところや、現在につながる茶の湯がどうやってつくられて、どう変わってきて、日本文化にどう関わってきたかが、時代を追って書かれている本です。

本書のいちばん良いところは、茶が日本に根付き、遊興にしても修行にしても、文化の領域まで高まっていったことを、文献を豊富に参照しつつ人物を中心にして歴史的に紹介している点だと思います。茶の湯と日本文化の今後について筆者は警鐘を鳴らしていますが、そのあたりは少し割り引いて読んだ方がよいかな、という感じでした。

いやはや、知らないことが多くて困ります。趣は異なりますが、岡倉天心の『茶の本』を再読したくなりました。