2009-05-27

『アインシュタインの夢』

アインシュタインの夢 (ハヤカワepi文庫)』(アラン・ライトマン)を読みました。

本書では、奇跡の年と呼ばれる1905年(の特殊相対性理論を発表する前)に、アインシュタインが見たかも知れない30の夢を、短編小説の連続のように綴っています。夢ものなので多少幻想小説的ですが、本書の憎いところは夢の設定がすべて時間に関連したものというところ。一定普遍の時間と空間というニュートン的世界からはみ出して、時間が様々なかたちをとっている世界が夢の舞台となっています。

人や場所によって時間の流れ方が違う世界、相対的速度によって時間が変わる世界、時間が延びたり縮んだり、時間が目に見えたり、未来が決まっていたり、時間が逆行していたり、円環になっていたり、エントロピーが減少したり。

夢で時間の流れ方が違うのはありきたりなことですが、様々なかたちをとっているところが魅力でしょう。僕は読み始めは戸惑いましたが、だんだん引き込まれていきました。夢の空間的舞台は19世紀初頭のスイスを基にしていて、現代の目から見たら幻想的な味わいはいや増します。ミヒャエル・エンデの『鏡の中の鏡』みたいな味わいだな、と少し思いましたが、物理学的なエッセンスが大量に加えられているので、不思議不思議と思うばかりではなく少し納得もしてしまいます。ちなみに著者は物理学者・天文学者だそうで。

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