2010-12-04

『虐殺器官』

異様なまでに絶賛される(ように僕には思える)『虐殺器官』(伊藤計劃)を、ようやく読みました。といっても読み終えたのは少し前のことなのですが。

どうも上手く感想が書けないのですが、じっくり考えればもやが晴れるようになるかも知れません。とにかく今のところ、僕はあまり好意的な感想を持てませんし、個人として高く評価できません。

非常にドライな世界観だと思うのですよね。単に戦場であるとか、テクノロジーで諸感覚が制御されているとか、主人公がきわめて内省的であるとか、そういったところは二の次に思えるほどに。

(以下、核心に触れるネタバレにつき、白文字)そのドライなところのなかでも特に世界の終末観に関して、どうしてもジョン・ポールと主人公の言動のあたり、作中での整合性が見えません。どこかの会話や独白で、自分でも本当と信じている類の嘘を言っているかも知れませんが、もしそうだとしたら、それはまた主要テーマに近いところでねじれてしまいます。先進諸国の住民やら愛やらを取り上げる事なんて、なにも必要ないはずです。単にそこ(終末、あるいは死)に惹かれていったからそうする。それだけで充分だったはずなのに、妙にそれっぽい理由付けをしています。その理由付けだって一巡りして陳腐なプロパガンダになることくらい、本書の中でも示されています。(ネタバレここまで)

というわけで、ドライに徹し切れていないところを想像で補わないと、僕には納得ができませんでした。既読の方で僕と同じような引っかかりを感じた人はいませんか?

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