2010-01-25

『使える! 経済学の考え方』

使える!経済学の考え方―みんなをより幸せにするための論理 (ちくま新書 807)』(小島寛之)を読みました。

即物的に使えるか否かというなら、使えないでしょう。そもそも謎の多いタイトルで、何が使えるのか(経済学が? 考え方が? )、何に使えるのか(日常生活に? 経済理解に? 仕事に?)はっきりしませんが、本書の主な内容は経済学理論の数理的解説です。著者のブログから引用すると、

この本のテーマは、一言で言えば、「幸福」や「自由」や「公正」や「平等」をどうやって、そして、なぜ、数理的に議論するか、それをわかっていただくこと。
だそうです。

ついでだから本書の目次も引用します。
序章 幸福や平等や自由をどう考えたらいいか
第1章 幸福をどう考えるかーーピグーの理論
第2章 公平をどう考えるかーーハルサーニの定理
第3章 自由をどう考えるかーーセンの理論
第4章 平等をどう考えるかーーギルボアの理論
第5章 正義をどう考えるかーーロールズの理論
第6章 市場社会の安定をどう考えるかーーケインズの貨幣理論
終章 何が、幸福や平等や自由を阻むのかーー社会統合と階級の固着性


そこに焦点を絞って本書を読むと、確かに著者の狙ったことはよく理解できます。名著と言って良いかも知れないくらいに。ただし僕はずっと経済学で言うところの「効用」が前提のように扱われていることに引っかかってしまい、すんなりとした感想は持てませんでした。ミクロ経済学で盛んに使われる便利な概念ですが、この「効用」をかなりのくせ者だと僕はずっと思っているのです。

ゲーム理論などにもっとも顕著なことですが、瞬時に効用を計算できるような理念型的な人間は、それこそノイマンのような天才でしかないのではなかろうかという疑問はよく口にされます。それ以外にも僕は、選好の順位を明確に認識しているとか、時間が経過してもそれらが変わらないと仮定することが不思議でなりません。それに効用を計算しようとしても、それらがヴェーバー・フェヒナーの法則のように物理量の対数と比例した感覚なのではないかとか、まるで通貨の代わりのようには効用を扱えないのではないかとか、いろいろ思っているのです。とはいってもそういった疑問は実験経済学とか行動経済学とかで研究されているのでしょうが。

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