2010-08-05

小説家という職業・英語は多読

何度も「自分には大して才能がない」と書かれているのを読むと、世界を産み出す想像力とそれをアウトプットする速さは明らかに天才的だろ、と何度も突っ込みたくなります。1日2時間の執筆を10日間、それで小説を一作書き上げるのは常人とは思えません。そんな『小説家という職業』(森博嗣、集英社新書)を読みました。

作品の好き嫌いはともかく(僕は初期の「森ミステリィ」が大好きです)、天才ですね。結論は「小説家になりたいなら、小説を読むな」「小説家になりたいなら、とにかく小説を書け」ということでしょうが、それだけでは話にならなりません。そこで著者の経験談からすれば、自分が提供できる作品を市場のニーズにすりあわせるための深い自省と作業があるのですね。職業小説家に徹しすぎていてクールすぎます。本書に書かれている森さんの方法論と戦略・戦術は、結果としてうまくいったから良かったのですが、近年のライトノベルのようにきちんとビジネスとして読者のニーズをできる限り汲むような作り方をしている作品群と比較して、なにが独自なのかはよくわかりません。一足早かったのでしょうかね。

出版不況だとかなんだとかいろいろ喧しいですが、森さんはその中で、どのようにすれば職業としての小説家がビジネスとしての創作をすることができるのかについて、考えをめぐらせています。どんな環境にあっても、なくなることがないのはメーカー(この場合は小説家)であるというあたり、確かにその通りだとは思いました。どことなく徹底していないと感じたのは、文字で感動を与える形態が依然として続くのだろうかと僕が思っているためです。森さんは様々なところで超合理的(というか、多少SF的)なことを書きますが(本当にそう思っているかどうかは不明)、突き詰めれば文字を媒体にして人が感動をするのは、もっとシンプルになり得るとはお考えではないようです。それが少し引っかかるところで、元小説家になる予定の人として小説を擁護しすぎているのではないかと思いました。

その他、『英語は多読が一番!』(クリストファー・ベルトン、ちくまプリマー新書)を読みました。英語を練習するためには小説をたくさん読みましょうという本で、タイトル以上のことはあまりありませんでしたが、細かいところで
・よくあるニックネームの一覧
・知らない単語の推測
・スラングの推測の仕方
あたりが役立ちそうです。細かいところが光る本でした。

ところが「多読」とはいっても、本書の話は小説に限定されているのですね。僕はノンフィクションばかり読んできましたが、僕が英語のできない理由はここにあったかと、無理矢理自分を納得させたいです。

1 件のコメント:

職務経歴書の書き方の見本 さんのコメント...

とても魅力的な記事でした。
また遊びにきます。
ありがとうございます。