2010-09-03

ここ1ヶ月程度で読んだ本

ずいぶん長いこと、読んだ本の感想を書き留めていませんでした。すでに記憶が風化しつつあるものもありますが(果たして読んだ本はこれだけだっけ? という疑いもあり)、とりあえず書き連ねます。

NOVA 1 ――書き下ろし日本SFコレクション』(大森望編)
日本人作家によるSF短編集。以下ちょっとだけコメントするけれど、コメントしない作品は僕にとってつまらなかった訳ではありません。
■「忘却の侵略」(小林泰三)
シュレーディンガー風味のとぼけた味わいが素敵でした。主人公の少年に幸多かれと思います。
■「エンゼルフレンチ」(藤田雅矢)
読む前に「ほしのこえ」と同じ系統かと決めつけてしまいましたので、意外でした。
■「七歩跳んだ男」(山本弘)
ミステリと言うには微妙です。と学会的に楽しいけれど。
■「ガラスの地球を救え!」(田中啓文)
目次には「SFを愛する者たちすべての魂に捧ぐ」とありましたが、マンガとアニメを愛する者たちすべてに近い。
■「自生の夢」(飛浩隆)
僕の好み偏向が入るけれども、さすがとしか言いようがありません。文章の力をひしひしと感じます。

天才と分裂病の進化論』(デイヴィッド・ホロビン)
分裂病(いまとなっては「統合失調症」)の発症率は民族・文化・地域に関係なく一定。しかもその遺伝的形質はヒトのDNAが今のようなものになった頃からあるらしい。それで、人類の進化は分裂病(の要素をもったひと)に由来するのではないか、という大胆なお話し。分裂病の生化学的な説明部分はとても説得力があるのだけれど、進化との絡みではかなり飛躍があって、分裂病と進化をリンクするのは、分裂病が不飽和脂肪酸に関する酵素の異常であることと、人類が他の霊長類と比較すると皮下脂肪も胸・尻・脳の脂肪も肥大しているということ。それから、分裂病の家系で創造性豊かな者が現れる率が高い、という程度しかありません。おおよそどんなことにもいえるのだけれど、進化の一面を取り上げて、もう一つ何か(例えばウイルスでもミトコンドリアでも二足歩行でもネオテニーでも)の一面を取り上げれば、両者の関連をお話しとして作り上げるのは比較的簡単です。でもエキサイティングな本でした。ちなみに僕のきょうだいは統合失調症です。

影響力 その効果と威力』(今井芳昭)
あまり感想がありませんでした。「影響力」の知見は、ウェーバーによる支配の類型をこえるインパクトをもったものがいまだに現れません(あくまで僕にとって、ですが)。

法人税が分かれば、会社のお金のすべてが分かる』(奥村佳史)
各章の導入部でお茶目な記述があったのが面白かったほかには、あまり感想がありません。法人税が分かれば法人税のすべてが分かる、くらいにすべきだと思います。会計や税務のプロフェッショナルは、彼らのクライアントにとってのお金を稼ぐことの厳しさを、時として甘く見ているのではないかという微かな疑いを僕はもっています。会社のお金で悩むのは、どちらかというと日々のキャッシュフローだと僕は思いますし。

不干斎ハビアン―神も仏も棄てた宗教者』(釈徹宗)
こんな人がいたのですね、というくらいの感想。ハビアンのことを理解するために現代日本の宗教状況を引き合いに出すのは、むしろ理解を損ねると思いました。僕の読み方の問題かも知れませんが、現代日本を理解するためにハビアンを持ってくるほうにシフトした方が、しっくり来ます。

人類が消えた世界』(アラン・ワイズマン)
すごく面白いのですが、いつまで読んでも暗い気持ちになります。ところどころで、意見の一致を見ていない(論争の種になるような)ことも一方的に書いたりしていますが、基調は「ある日突然人類が消えたら、世界はどうなるか」ということですから、とやかく言うのは野暮かも知れません。それでも生態系や環境などの複雑なシステムに関しては幾分説得力が弱く感じました。本書の最も面白いところは、人工構築物がどのように壊れていくか、というところだと思います。

ハンコロジー事始め―印章が語る世界史』(新関欽哉)
本書はゴミ捨て場から拾ったのですが、まさしく「拾いもの」でした。シュメールの印章からはじまって、有名な文明圏での印章の歴史を紹介しています。つまりは古代から近代にかけての文明間の交流を描いてもいるのです。図や写真も多く、手に取るに喜ばしい本でした。

R.O.D 1』(倉田英之)
あまり感想がありません。続編はたぶん読まないでしょう。

バッカーノ!1932―Drug & The Dominos』(成田良悟)
あまり感想がありませんが、たぶん続編も読むでしょう。ライトノベルにしては案外読みにくい部類に入るのではないかと思いました。

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