2007-06-19

ラブレターの配達ではない

歌舞伎を観に行った。
演物は「恋飛脚大和往来」、近松の代表的な心中物。

ちなみに、同居人にこれをどう読むか聞いたところ、
「ラブレターのメッセンジャーが奈良方面を行き交う話」
と答えた。慧眼である。

歌舞伎を言葉で語るには
社会現象を記述するのと同じような努力と技術を要するが、
ほんの少しだけ愚かさを覚悟して。
一言でいうと、悪くなかった。

封印切の後半にいくほど、忠兵衛(染五郎)の芸に感心した。
井筒屋の2階から降りてきて封を切るまでなど、
実に鬼気迫り、形よく、素晴らしかった。

よく上方和事というが、その風は僕には余り感じられなかった。
あまり和らかではない部分がより光って見えたのは、
僕が若いせいかもしれない。

新口村では、色も形も美しく、
それだけでも十分観てよかったと思った。
梅川と孫右衛門のやりとりに複雑な心情が映し出されて、なおよい。
よくない例えだとおもうが、二人のやりとりには、
まるでラヴェルのボレロのような動きを感じた。
(後半へ向かっての積み上げかたとか、緩急のつけかたとか)

まあ、楽しかったということです。
浄瑠璃だともっと楽しくなってしまうかもしれないと、
ちょっぴり思ったのはさておき。

0 件のコメント: