2010-10-23

『つながり』

つながり 社会的ネットワークの驚くべき力』(ニコラス・A・クリスタキス、ジェイムズ・H・ファウラー)を読みました。

以前の仕事の絡みで、社会的ネットワークについてはいろいろな論文を読んできました。「スモールワールド実験」以来この分野では実証的な研究が多く行われましたが、基本的には歴史の長い共同体研究にルーツがあるのではないかと思います。本当にルーツをたどるなら、社会関係の成員どうしによるコミュニケーションで、どこかで発せられた情報が他の成員の行動にどのように影響するかを研究するというところから、かの有名な権力の定義である「ある社会関係の中で、抵抗を排してまで自己の意志を貫徹するすべての可能性」あたりまで行き着くとまで思います。

しかし本書で紹介されている研究の新しさとおもしろさは、従来のように狭い範囲のネットワークを研究するのではなく、数百万人単位にまで及ぶ広範囲のネットワークを扱っているところで、その規模だけからいっても非常に興味深いものでした。

本書を読んで一番おもしろかったのは、伝染病のように社会的影響力が広がること、さらには条件によって広がり方が異なることを説明しているところでした。例えば「幸せ」や肥満や禁煙や趣味や支持政党などが、直接関わりのある(つまり隔たりが1の)人たちに影響を及ぼすだけではなく、隔たりが3の人にまで有意に影響を及ぼすということなどです。また、幸福や笑いといった好ましい特性のほうが、不幸などの好ましくない特性よりもネットワークを広がるのが速い、というのも驚きです。直感的には逆のような気がしましたので。

それにしても本書の途中で、性感染症やセックスパートナーのネットワークを分析対象とするところは、すこし苦笑いを禁じ得ません。そういったネットワークがいかに研究に値するかをこれでもかというほどに書いているのですが、なんだか冷めた目で見れば必死だな、という感じさえ受け取ってしまいました。

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