2007-03-14

現実感

「現実感はありますか?」と聞かれた。僕は聞かれた内容を理解できなかったので、「それはどういう意味ですか」と聞き返したところ、「まるで今住んでいる世界が現実ではなく、ヴァーチャルな世界にいるような感じがするかどうか、ということです」という。「愛国心とは何か」と聞かれて「国を愛する心です」と答える話と同じで、意味を話しているのではなく、単に言葉を継ぎ足して説明しただけだというツッコミをいれたかったけど、悪い印象を持たれたくないのでそれはひとまず流した。

僕はこの手の話は中学生の頃から好きで、SFのテーマにも哲学のテーマにもなる。医学的にどんな常識があるのかは知らないけど、かりにヴァーチャルな世界にいる人間が現実世界にまぎれていたら、それは当人にとっての「現実」であり、決して「ヴァーチャル」ではないし、逆に世界がヴァーチャルだとしたら、ヴァーチャルこそが「現実」だろう。したがって、先の精神科医への答えを僕なりに正直にいうと、「わかりませんし、知りようもありません」になる。

実際には質問を設定しなおして、「仮に一日中夢を見ているかのような感覚で、現状認識に違和感があったり、一貫性がなかったりするか、という事でしたら云々」というふうに話をしたけど、精神科の診断って難しいな、と思った。と同時に「現実感とはなにか」という疑問を持ってしまった。

実際、現在の僕は現実感が薄いと思う。というのは以前はできなかった口約束をすることができる。本当は行きたくなくとも「気晴しに旅行にでも」とかいわれると「いいですね、そのうち行きましょうか」とか答えてしまう。毎朝家の前を通り過ぎる満員電車の中の人の感情を想像できない。ご飯を食べた直後に「さっき何を食べたっけ」と思ってしまう。ニュースを見なくなってきたので、世界に何が起こっているか知らない。買いものメモを作っておかないと、冷蔵庫に卵が20個くらい入る結果になったりする。脈絡の無い妄想はいろいろと出てくる。でもこれって、結構普通の感覚なのではないかと思う。

さて、今朝は会社でミーティングするという非常にリアルな夢をみて目が覚めたのだけど、目が覚めた後の僕が現実か、目が覚めたという夢を見ている僕が現実か、誰に判断できるというのだろう。独我論も純粋に論理だけでは反証し得ない完全なものだと思うし。

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