2009-08-03

微分・積分を知らずに経営を語るな

微分・積分を知らずに経営を語るな (PHP新書)』(内山力)を読みました。今回は流され型の読書で、目的地まで2時間電車に乗らなければいけないのに、車中で読む本をデスクに置き忘れたため、駅ビルの本屋さんでささっと選びました。

感想。う~ん、エッセンスはとっても素敵だと思うし、多いに共感するのです。経験と勘と度胸に頼る予算や予測や見積もり(KKD法と呼ばれ、世間で最も広く採用されている方法です)が世の中に満ちあふれていますし、本当にこれが現時点でのベストな決断か、という疑問にはいつもつきまとわれています。だから最適解を導く方法論として、すごく有効なやり方だな、と思うのです。僕自身の得意なツールは統計なので、微分・積分は手法として使わざるを得ない、という事もあります。

でも本書はエッセンスのみなのです。ターゲットはあくまでも「微分・積分って何?」な人のようなので、こういう事を新書に求めるのは筋違いかも知れませんが、もっとつっこんだ内容になっていると「使えるかも知れないな」というレベルから「うん、こいつはいい!」というレベルになるような気がしてなりません。それに計算の理屈に関する説明がほとんどないので(例えば「パソコンがすべて計算してくれます」と頻出します)、実務上どう計算するかを理解していないと、結局は魔法の数字になってしまいます。でも本書の目的は「使えるかも知れないな」と思わせるところ、つまりは入口まで連れて行くことにあるなら、おおいに成功していると思いました。

ツッコミ所もたくさんありました。まずは理系・文系とわけすぎなのが鼻につきます。文系と言われる学問領域でも、ジャンルによっては数学的な操作は必須の手法ですから。それから説明ミスが目につきました。その一例を引用すると、発注点発注法について書いている場面で、「この工場の1ヶ月間のネジの使用量を調べてみると、1日平均200本使っていました。そこで3日分の需要として600本を発注点とするとどうなるでしょうか。(どうでも良い部分を中略)これでは2日に1回欠品してしまいます」とありますが、「欠品」は筆がすべったとしか思えません。正確には、総じて言えば2日に1回は平均使用量を上回る、というくらいなものです。欠品するわけないでしょうに。その他、平面散布図から最小二乗法で1次方程式を導いた時の点と直線の関係について、「距離」と書いてしまっていたり(素人考えですが、「距離」だとしたら、垂線を求めるのが筋というものではなかろうか)、うっかり感が漂います。

でも楽しい本だったのですよ。

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