2008-12-22

『クリスマス・キャロル』

ここ20年くらいの毎年恒例ですが、この時期になると色々な版の『クリスマス・キャロル』を読みます。今年は今まで未読だった池央耿さんの光文社古典新訳文庫を読みました。

言うまでもない名作ですから話はさておき、翻訳は固いな、という感じがしました。ディケンズの文章は当時としてはとても読みやすい平易な言葉で書かれていますが、それを現代の日本語に置き換えた時にはどういう訳にするか、訳者によって大きく異なります。いわゆる豪傑訳というものもありますが、池さんの翻訳は格調高く、古典を古典として尊重するような翻訳でした。

気に入った訳文と、その原語を引用します。

ああ、冷厳にして非常なる死よ、このところに汝が祭壇をしつらえ、意のままなる恐怖のありたけをもて飾れかし。こは汝が領域なればなり。さりながら、ものを脅さんそのために、まった毀損の意図により、愛され、敬われ、讃えられたる頭に限り、髪一筋たりとも掻き乱すことなかれ。もとより、その手の重く、放せば落つる故ならず。鼓動、脈拍、打たざる故ならず。なにさま、その掌は広く、豊けく、真なりき。心は強く、優しく、深かりき。たぎるは赤き血なりけり。打つがいい。陰鬼よ、打って打ちたたけ! そが善行の傷より噴き出で、地上に永遠不滅なる命の種を蒔くを見よ!


Oh cold, cold, rigid, dreadful Death, set up thine altar here, and dress it with such terrors as thou hast at thy command: for this is thy dominition! But of the loved, revered, and honoured head, thou canst not turn one hair to thy dread purposes, or make one feature odious. It is not that the hand is heavy and will fall down when released; it is not that the heart and pulse are still; but that the hand WAS open, generous, and true; the heart brave, warm and tender; and the pulse a man's. Strike, Shadow, strike! And see his good deeds springing from the wound, to sow the world with life immortal!

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