2008-12-09

『フロスト気質』

フロスト気質 上』『フロスト気質 下』(R・D・ウィングフィールド)を読みました。

これまで通りのフロスト警部を読んで、安心するというかパターン通りで残念というか、とにかくシリーズのこれまでの作品同様に楽しめました。しかも今回は長い。長いぶんだけ事件も多く、登場人物も複雑で、デントン警察署の混乱もこれまで以上です。

このシリーズの特徴は、事件を解決しないことなのですよね。事件は勝手に解決されるというか、フロスト警部が八面六臂の活躍をしてもしなくても、事件解決にはそれほどの影響を与えない。それだけ間が抜けて見当外れで(でも時として適切で)場当たり的な捜査を進める訳です。

名探偵活躍ものでもなく、論理的に推測可能でもなく、地道な実証調査でもなく、取り立ててアクションもなく、色気らしきものもさほどなく(エロ気ならありますが)、ただただどうしようもないオヤジがドタバタと休まずに仕事をする。そんな話が楽しいのはまことに不思議というものですが、それが面白いのです。多くの事件がひっきりなしに起こり、それらの事件を平行して捜査しながらも、それらの事件は何のつながりもなく、解決されるべき時にしかるべくして解決されるのが。

この面白さは多分、ミステリの面白さではありません。人情話の面白さというか、イギリス風猥談の面白さというか、とにかく正統派ミステリファンからは白眼視されそうなものです。ですが僕はこのシリーズは一作目の翻訳が出た時から好きなので、今回も大いに楽しんで読みました。解説を読んで知ったのですが、残念なことに作者は物故なさっているので、日本語訳はどうやってもあと二点しか刊行されません。本作を読み終えてしまったのは、少し残念な事です。

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