2008-12-10

『サイエンス・インポッシブル』

サイエンス・インポッシブル―SF世界は実現可能か』(ミチオ・カク)を読みました。

科学読み物として、実にアレな感じたっぷりでありながら、なおかつものすごく参考にも勉強にもなるという、希有な本でした。本書では様々なSFに登場するような物事を、現代物理学でどのように説明するか、あるいはどのようにしたら実現できるかを真剣に論じた本です。

目次を部分的に引用すると、

不可能レベルI
1. フォース・フィールド
2. 不可視化
3. フェイザーとデス・スター
4. テレポーテーション
5. テレパシー
6. 念力
7. ロボット
8. 地球外生命とUFO
9. スターシップ
10. 反物質と反宇宙

不可能レベルII
11. 光より速く
12. タイムトラベル
13. 並行宇宙

不可能レベルIII
14. 永久機関
15. 予知能力

と、魅力溢れるSF要素を説明しています。ちなみに不可能レベルIは「現時点では不可能だが、既知の物理法則には反していないテクノロジー」、レベルIIは「物理的世界に対するわれわれの理解の辺縁にかろうじて位置するようなテクノロジー」、レベルIIIは「既知の物理法則に反するテクノロジー」ということです。

トンデモ科学に反論するのでもなく、『空想科学読本』のようにお話がいかに現実的ではないかを説明するのでもなく、SF的世界がいかに現実的かを説明する本ですので、じっくり読むとSFの読み方が変わってしまいそうです。というよりも、既に現代物理学が過去の物語に追いつきつつある、とでも言うのでしょうか。

残念なところとしては、数式を一切用いていないところです。著者は有名な超ひも理論の研究者ですが、数学という言語を用いての説明がないと、著者の話が全くのほら話なのかそうでないのかを読者が検討できないところです。まあ普通の読者は現代物理学で使われる数学を理解できませんから(少なくとも僕は理解できません)、それでよしと言えばよいのですが。

蛇足ながら、東京大学の舘研究室が「光学迷彩」(攻殻機動隊に出てくるやつです)を部分的に実現させた時には興奮しました。まさに「充分に進歩したテクノロジーは、魔法と区別がつかない」ですね。

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