2009-03-08

『物語 中東の歴史』

物語 中東の歴史―オリエント5000年の光芒 (中公新書)』(牟田口義郎)を読みました。「物語」と銘打ってあるにしてはあまり物語ではなく、「中東の歴史」と銘打ってあるにしては中東の歴史を広く取り扱っているわけではありません。

目次

序章 中東の風土 われわれの認識は確かか
第一話 乳香と没薬 古代を知るためのキーワード
第二話 女王の都パルミラ 西アジアでいちばん美しい廃墟
第三話 アラブ帝国の出現 噴出したイスラーム・パワー
第四話 「蛮族」を迎え撃つ「聖戦」 反十字軍の系譜
第五話 風雲児バイバルス 一三世紀の国際関係
第六話 イスラーム世界と西ヨーロッパ 中世から近世へ
第七話 スエズのドラマ 世界最大の海洋運河をめぐって


話を簡単にしようと思っても、どだい無理なのです。メソポタミア周辺の古代文明をたどるだけで、おそらく専門書数冊を要するでしょう。ペルシャ支配の時代で数冊、イスラーム帝国の時代で数冊、モンゴル支配の時代で数冊、オスマン帝国の時代で数冊、近現代でまた数冊、などなど、きりがありません。通り一遍の知識を得ようと思っても「中東」と一言でいわれる地域は複雑すぎて。

その複雑な歴史を語るにあたって、本書のようにトピックをピックアップするのはよく考えられた方法だと思いました。それに本書ではイスラームやクルアーンの記載がいい加減ではないので、好感が持てました。それにしても、この本は中東の歴史を知っている人に役立つ本で、まったく知らない状態では読むのも苦痛になるのではないかと思いました。

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