2009-03-11

『この人を見よ』

ふとした気まぐれで、『この人を見よ (岩波文庫)』(フリードリヒ・ニーチェ)を再読しました。10年以上前に岩波文庫で出ているニーチェの著作をむさぼり読んで以来、はじめての再読ですから、忘れているところもかなり多くてなかなか興味深い読書ができました。

僕もそろそろ、自分やら世界やらに不満たらたらな青少年ではなくなってきたので、読むにあたっては聖人や超人や哲学者や心理学者というイメージを持たないように気をつけました。えらい人が残した名作というのではなくて単なる文章として読もう、と決めて読んだのです。そうするとこれがまた面白いです。

だいいちタイトルだって『この人を見よ』ですよ。別の言い方をするなら「オレ様を見ろ」ですよね。各章だって「なぜオレ様ってこんなに賢明なんだろう」「なぜオレ様ってこんなに利発なんだろう」「こんなによい本を書くオレ様って最高!」という感じです。冷静に読んだら笑いはこらえきれません。ドイツの悪口には筆が冴え冴えとしていますし、ヴァーグナーのドイツ的なところを礼賛するドイツ的なものに対する罵詈雑言も素敵です。キリスト教や道徳や倫理といった「まやかし」を攻撃するにも容赦ありません。一方で自分を持ち上げることは晴れ晴れとしていて、幾分こじつけだろうというところでも力業で褒めそやします。

『ツァラトゥストラ』も再読してしまおうかな、と思いました。ついでに、リヒャルト・ストラウスの「ツァラトゥストラ」をニーチェはどのように感じたのかな、と疑問を覚えました。「2001年宇宙の旅」以降はすっかりギャグやパロディで使われることの多い曲ですが。

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