2008-02-26

『男の凶暴性はどこからきたか』感想

男の凶暴性はどこからきたか』(リチャード・ランガム、デイル・ピーターソン)を読みました。実に読み応えのある面白い本でしたので、僕が何か要約めいたものを書くとそれが誰かの妨げにならないかと心配になってしまいます。

僕は残念ながら男なので、このようなタイトルの本を読むと申し訳ない気分になるのだけれど、原題の『DEMONIC MALES Apes and the Origins of Human Violence』の方が本書の内容をきちんと表現していると思います。つまり「暴力性の由来が氏か育ちか」という問題をまずは氏のほうから考察する内容で、人類が分化したあたりの近縁種や現在の霊長類の攻撃行動から人類の凶暴性を考えてみよう、という内容でした。

僕自身の傾向としてはどうしても育ちを重視しがちなのですが、やはり氏に由来するところもあるよな、と認めながら読ませられますし、遺伝子決定論には与したくないけれども、ある社会形態での繁栄に有利な生殖行動は獲得形質として遺伝するよな、と思わされます。

人類の起源、文化・文明と暴力、チンパンジーの暴行、オランウータンのレイプ、ゴリラの子殺しなど、それぞれをとってみても興味深いのですが、それらがすべて人類(の男の暴力性)と結びつけて一冊が編まれているので、どこを読んでも一本筋の通った素敵な本でした。また、各章の終わりには疑問形で次の章で答えるべき問題が書かれているので、各章の間のつながりもとてもスムースです。

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