2007-12-19

名作はあとで読む

喫煙が体にいいといいたいわけではない。でも毎日犯されている政治的、社会的な非道に比べれば、喫煙なんてたいした問題ではない

ポール・オースターの何かに書いてあったのだということはぼんやりと覚えているのだけど、何にあったか思い出せない。これを皮切りにあれこれ思い出そうとすると、かつて名作といわれる小説やら哲学書やらを大量に読んでいながら、それらを思い出せることが少ないことに愕然とした。

高校生のときに太宰やら安吾やらの文庫本を端から全部読んだ。漱石全集を1巻から順番に全部読んだ。そのころは岩波文庫の赤と青はとにかく読んだし、新潮文庫の古いものも1冊10円の古本屋で山のように入手しては読んだ。それでいながら何から何まで思い出せない。

思うにそれらの背伸びをした読書は、僕にとっての通過儀礼でしかなかったのではないか。今から思うともったいない。よく「若いうちにたくさんの名作に触れていたほうが良い」と言われるけれど、今はそう思わない。読むべき価値のある本は、読むべき価値のあるときに読んだほうが良いと思うのだ。つまり未熟な頭と心をもって偉大な作品にあたっても、吸収できるものが少なすぎるのではないか、消化不良をおこすのではないか、と思う。

もちろん何らかの形で偉大な作品に接することは、きちんとした形にならなくとも大切なことだと少しは思う。でも僕のように読み殴ってしまうと、文字面をなぞるだけでそこに秘められている叡智を汲み取れない。せめて僕程度の凡庸な頭の持ち主は、10代のうちは少数の名作をじっくりと読むほうが良いのではないか。もっと頭も心もこなれてきてから名作に触れたほうが味わいが深いはずだ。もちろん10代のころのほうが時間が有り余っているということはあるにしても。

と思いながら、いまだに読み殴っている。さすがに小説の斜め読みはしなくなったけれど。

2008-02-15追記
ポール・オースターの言葉が気になったので、きちんと読んでみた。"Three Films: Smoke/Blue in the Face/Lulu on the Bridge" に書いてあった。以下、引用
I'm not saying that smoking is good for you, but compared to the political and social and ecological outrages committed every day, tabacco is a minor issue. People smoke. That's a fact. People smoke, and they enjoy it, even if it isn't good for them.

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