2009-02-04

『ローマはなぜ滅んだか』

ロ-マはなぜ滅んだか (講談社現代新書)』(弓削達)を読みました。こういう刺激的なタイトルにはついつい惹かれてしまいます。

ローマ帝国滅亡の原因については色々な憶測が巷を流れていますが、本書では当然何か一つのものに原因を求めたりはしません。経済史とローマ史を専門とする著者らしく、ローマのインフラやら経済体制やら、果ては文化や人間観まで解説をしています。

本書の一番面白かったところは、最後の部分で「中心」と「周辺」の交互作用について触れているところでした。ローマ帝国自体ギリシャ文明にとっての周辺ですし、それを飲み込んで新しい中心となったようです。また都市国家というものも偏在する中心として帝国内で機能し、その周辺を磁石のように引き寄せます。そしてさらに新しい周辺として飲み込みつつも飲み込みきれなかったゲルマン系民族との関係で、ついにローマが飲み込まれる側になったあたりの説明は、とても参考になりました。

また本書はローマ時代を通じて現代を見る視点から書かれていますので、そのままとは言えませんが、現在の経済的先進国とそれを追い上げる国の関係として読むことも出来ます。ただ個人的な望みとしては、宗教と文化の問題をもう少し取り上げてくれるともっとローマ時代に親しむことが出来るな、と感じました。僕にとっての謎は、ローマの国教がキリスト教になったことですので。

0 件のコメント: