2009-02-09

『もっとも美しい対称性』

もっとも美しい対称性』(イアン・スチュアート)を読みました。バビロニアの昔から現代にいたるまでの数学の歴史を、群論とその数学的対称性を中心にして解説しています。ですから本書でもっとも大きな位置を占めるのは「群」ですし、数体系です。

目次
第1章 バビロンの書記
第2章 王族の名
第3章 ペルシャの詩人
第4章 ギャンブルをする学者
第5章 ずる賢いキツネ
第6章 失意の医師と病弱な天才
第7章 不運の革命家
第8章 平凡な技術者と超人的な教授
第9章 酔っぱらいの破壊者
第10章 軍人志望と病弱な本の虫
第11章 特許局の事務員
第12章 量子五人組
第13章 5次元男
第14章 政治記者
第15章 数学者たちの混乱
第16章 真と美を追い求める者たち


本書は色々な読み方で楽しめます。まずは全編通して数学者列伝としても読めますし、数体系の歴史とも読めます。前半はn次方程式の歴史としても読めます。後半は相対論と量子論の統合へ心血を注ぐ人たちのドラマとも読めます。どのような読み方をしても面白いのは、基本軸がものすごくしっかりとしているからでしょう。基本となるのは「真は美である」ということと「美は真であるか?」という問いです。本書の最後はこのように締めくくられています。「物理学においては、美は自動的に真を保証するわけではないが、その助けにはなる。/数学においては、美は真でなければならない。偽はすべて醜いのだから」

ただ、例外型リー群が本書のなかでもとりわけ重要な位置を占めているにもかかわらず、本書ではリー群の説明が足りないかな、と思いました。あとは現代の数学には僕の理解の及ばないところもあり、そのあたりは正直よくわかりませんでした。本書はほとんど数式を使わずに書かれているのですが、もう少し数式を用いてくれたほうがわかりやすいのにな、と思わされるところもあり。

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