2008-11-01

『闇の公子』

闇の公子』(タニス・リー)を読みました。

本書の構成は、かなり短編小説の連続に近いです。一つ一つの短編を読んでいるようで、人間の感じる時間では非常に長い歴史をたどりながら、全体として一つの物語を作っている様は、本当に見事でした。禍々しくて美しい世界も、とてもきれいな文体(翻訳には苦労したでしょうね)で描かれているのでとてもしっくりとしています。

この作品のようなファンタジー世界は、僕の大好きなエルリック・サーガと少しだけ似ています(ちなみにエルリックが初登場したのは1961年、本作は1976年初出です。両者ともロンドンですね)。剣と魔法の世界で、筋肉にものを言わせて剣をあわせる主人公ではなく、ほっそりとして妖艶な美しさを秘めた主人公が、圧倒的な邪悪さと不可思議な強さを持っているあたりが似ていなくもないです。つまり僕のツボにはまりました。アンチ・ヒロイック・ファンタジーの一種と言えるかも知れません。

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