2008-07-09

妙なる技の乙女たち

妙なる技の乙女たち』(小川一水)を読みました。舞台は軌道エレベータの設置された赤道上のリンガ島。宇宙産業の発達した近未来を描く短編が7話収録されています。

SFの王道から行けば、研究者や冒険者やそれに巻き込まれてしまった人など、世界のエッジを切っている人が主人公になるところですが、本書ではあくまでもバックエンドで手に職を持つ(というか普通に働いている)女性を主人公にしています。働く女性のSF物語というとステレオタイプが頭に浮かんでしまいますが、文字通り「地に足の着いた」職業人たちが描かれていて、とても楽しく読めました。

ただ、タイトルに不満ありです。あまり「技」を前面に出さないほうが良かったのではないか、という感想を持ちました。もちろん工業デザイナーも彫刻家も艇長も「技」に長けた技術者ですが、この作品で僕が一番気に入ったのは、多様な民族的な背景を持った人たち(基本的には主人公は日本人ですが)の描きっぷりと、宇宙時代にも変わらずに持つであろう人間の文化的側面だったからです。

いずれにせよ、人におすすめしたくなる本でした。

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