2008-09-07

ラギッド・ガール

ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉』(飛浩隆)を読みました。前作の『グラン・ヴァカンス』の中で描かれる世界を補完する作品集、といってしまうとまるで付録のように聞こえてしまいますが、この作品群だけ取り上げても充分独立しています。

前作同様の「数値海岸」を主要な舞台としていますが、仮想世界と人間世界と半々ぐらいでしょうか。その「数値海岸」の成立や、その仮想リゾートに人間が訪れなくなった理由などが描かれているので、『グラン・ヴァカンス』をより楽しむためには必読かもしれません。

しかし、僕自身の感想としては『グラン・ヴァカンス』自体で充分に満足できる作品でしたので、ある意味蛇足のような、興ざめのような、自分の想像力を限定されるような、そういう肩すかし感もありました。しかし『ラギッド・ガール』にもまだ魔法的な不思議な部分はあるので、まだ同じ楽しみ方ができます。

しかし、文章も内容も美しく、残酷で、グロテスク。耽美耽美したところもなく突き放したような文体。通奏低音のように流れている、情念や感情など人間のグロテスクな部分と、機械の無機質なところがうまくマッチしています。

いや、今まで知りませんでしたが、こんなすごい作家がいたのですね。『グラン・ヴァカンス』とあわせて、心底感心しました。次作が楽しみですが、果たしていつ出ることやら。

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