2008-09-30

レックス・ムンディ

レックス・ムンディ』(荒俣宏)を読みました。

いやはや、巨人アラマタの凄さは小説でも健在だと感じました。『ダ・ヴィンチ・コード』と『パラサイト・イヴ』と『神々の指紋』を足して、アラマタ流の世界観を盛り込んだ感じです。と書いても、僕の感じたアラマタの凄さが上手く伝わるかどうかわかりませんが。

博覧強記の著者が、古代巨石文明やら人類の進化やら神やらキリストやらを、一冊の決して長くはない小説にまとめてしまうところが恐ろしいです(『ダ・ヴィンチ・コード』なんて文庫で三冊ですよ)。ただし、一冊にまとめてしまったからこそ、細かいところにもっと説明があった方がいいんじゃないかな、という感想も持ちました。例えば先日日記に書いた『ウイルス進化論』のような内容も含んでいますので、ヨーロッパ史やキリスト教史や考古学や風水や遺伝論や、といった諸々のことに通じていないと、小説のどこまでが事実でどこまでが創作か、という線引きが難しくなってしまいます。

この作品は先が読めます。ですからストーリーは平凡と言ってしまえば平凡なのですが、その先読みを次々と理由付けていくところに、僕は一番の魅力を感じました。その理由付けには、それほど無理もなくトンデモ科学やら信仰やらを盛り込んでいますし、もしもノンフィクションとしておもしろおかしく書いても、さほど違和感は感じないでしょう。それがこの巨人アラマタの凄さです(というか、著者のノンフィクションでも、この小説の題材は扱っています)。

堪能させていただきました。もっと長い小説になってくれれば、もっと堪能できたことでしょうが。

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