『航路(上)』『航路(下)』(コニー・ウィリス)を読みました。いやはや、長い。
小説のあらすじを紹介すると、ほとんどネタバレになってしまいそうなので、簡単に言うと臨死体験を「科学的に」研究する主人公たちとその所属している病院での物語です。科学的に臨死体験を研究する主人公たちの天敵として、トンデモ系臨死体験の導師的存在がいます。その二派の対立も面白いですが、病院内での決して椅子を暖めることのないどたばたも面白いし、もっと高尚には人間の生と死を考えさせてくれます。合計三部からなる小説なのですが、第一部も第二部も驚かされる結末となっていました。
長い小説には長い小説の面白さがあります。綿密に構成されたプロットや、存分に描ききるキャラクターなど。それにしても迷路のような病院内を右往左往するシーンが多すぎるのにはちょっとうんざりしました。もうちょっと短くまとまるのではないかな、という気がします。
僕は臨死体験本は結構好きなんですよ。シャーリー・マクレーン系のトンデモ本にもとりあえず目を通しますし、立花隆さんのノンフィクションや瀬名秀明さんのSFとかは2回以上読んでいます。というのも、僕自身が呼吸停止数十分・心臓停止数分という記録を持っていることもあります。その際に臨死体験をしたような気もしますが、後から話を作っている可能性もあるので、その体験を鮮烈なこととして記憶していませんし、したような気がする、という程度にとどめておいています。
僕の経験は1980年代初頭で、「臨死体験」という言葉も有名ではなく、その時は単純に変だなと思っていました。まあずいぶん前の話ですから、記憶はかなり歪められているでしょうね。
とりあえず臨死体験を「科学的」なアプローチから攻めようとしたSF作品として、一読には値しますし、キャラクターは類型的ですぅっと入り込めますし、ストーリーも練りに練っています(ちょっと伏線が多すぎ、という感じもしますが)。そして充分に感動的な作品となっています。それにこう書くとおまけのように聞こえてしまいますが生と死について考えさせられます(というか、僕の考えている臨死体験のイメージと似ていた)。
それにしても長かった。
2008-09-16
航路
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