2008-10-30

問題は「数字センス」で8割解決する

問題は「数字センス」で8割解決する』(望月実)を読みました。この本を読んでも僕の数字センスは良くなりませんでしたが、内容は非常にやさしくてわかりやすく、ビジネスをしている人の一部にとって、本書は有意義であり得るとは思います。

本書では「数字センス」的な力を「数字を読む力」「数字で考える力」「数字で伝える力」の三つに分けて、それぞれケーススタディをしていますが、日々経営的な仕事に従事している人としてみれば、御説ごもっともという感じです。なんだか満足感がないのですよね。その理由を考えてみました。

第一点に、内容がやさしすぎる(既知のことがほとんどである)ことがあげられると思います。この本は一体誰にむけて書かれた本なのでしょうか。少なくとも経営に携わる人間ではないのではないかと思いました。会計にまったく馴染みのない人や、プレゼンテーションの経験が少ない人にむけて書かれた本なのかな、と。わかりやすく書かれているため、必然的に物事を非常に単純化していますので、真剣に経営に悩んでいる人だと逆に怒り出してしまうのではないかとさえ思いました。

第二点に、統計やグラフのトリックを使って「数字で伝える力」を伸ばすようなことが書かれているのに不満です。「数字を読む力」と表裏一体ですが、騙されるのと騙すのはおなじ手法です。なんだか「騙す方にまわりましょうね」みたいな感じがして、少しいやな印象を受けました。もしも僕が本書の「数字で伝える力」に出てくるようなレポートを読んだら、絶対にその正当性について突っ込みをいれます。また、僕が他人に社内的なレポートを要求する場合には、本書のすすめる方法はできるだけ避けるよう忠告するでしょう。

とはいえ、わかりやすい本を書くことはとても難しいので、著者はいい仕事をしています。ただし、自分の事務所を持つ公認会計士の書いた本だからきっと経営者にとって素敵な内容が書かれているだろうと期待するのは間違いで、あくまでも数字を道具として使うのが苦手で使ったこともない人にとって素敵な内容が書かれている本でした。

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