2008-10-08

セラピー文化の社会学

セラピー文化の社会学 ネットワークビジネス・自己啓発・トラウマ』(小池靖)を読みました。

実に丁寧に書かれている本だという感想を持ちました。著者の博士論文がベースとなっているのですが、フィールドワークをもとにしていますし、身近な題材を扱っているので、社会学の専門書としては非常に読みやすいと思いますし、普通の読書好きにもおすすめできます。

本書の内容を要約するのが面倒なので、Amazonの「内容紹介」から引用します。


ポジティブシンキング、心理療法、自助グループ、スピリチュアル…現代社会を席巻する心理主義=ポップ心理学。その実態を長年のフィールド調査から明らかにする。

心理学的な発想によって私たちは生き方を決めることがあるのだろうか?販売員ネットワーク、自己啓発セミナー、アダルトチルドレン・ブームなどを題材に、社会学の立場から現代の「セラピー文化」を分析する。前向き思考、人格改造、トラウマ説は、現代人にとって何であるのか。文化社会学、宗教社会学の双方にまたがる意欲作。
これだけでは何が書いてあるのかよくわからないでしょうけれども、まあ興味をひかれたら本書を手にとっていただければ良いと思います。ちょっとしたしがらみがあることがわかりまして、購入していただけるとより良いです。

どうも宗教社会学の本にしてはすんなりと理解できすぎると思ったら、僕とものすごく色々なところがかぶっていることが、あとがきで判明しました。すんなり理解できるのも道理です。

何となく気後れして、あまり詳しくは感想を書けません。ただ著者は、トラウマ・サバイバーの運動をアルコール中毒者のセルフヘルプグループをして代表させていますが、これは他の二者(ネットワークビジネス、自己啓発セミナー)とは大きく異なる性質を持っているので、「セラピー文化」の重層性としてとらえていますが、確かにそうだなと一面では思います。

ただし、もっと政治的・文化的に先鋭化しているセルフヘルプグループもあります。例えば障害者運動の一側面などですが、これを著者に伝えるべきかどうか。この三つ目のトラウマ・サバイバー運動に関しては記述が薄いと感じましたし、その脱近代的な性質やアルベルト・メルッチがいうような「新しい社会運動」としての位置づけが本書の論述の中では接ぎ木されているような印象を受けました。

とにかく気後れして、詳しくは書けないのです。いやはや。

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