2008-10-11

新宗教の解読

新宗教の解読 (ちくま学芸文庫)』(井上順孝)を読みました。

内容紹介を、「BOOK」データベースから引用します。

社会の矛盾や歪みを映し出し、また民衆の欲求を吸いあげる新宗教。天理教、創価学会から幸福の科学、オウム真理教にいたるまで、時代や社会を反映する「近代日本に出現した新しい宗教システム」としての新宗教を読み解き、宗教史的・社会学的な観点で洞察する。新宗教はなぜ生まれ、どのような道をたどってきたのか…150年にわたり激しく息づき、現在もなお多様な活動を展開しているこれらの現象を追究・分析する。「混迷の時代とオウム真理教」を加筆。


やっぱりこの引用からだけではよくわからないですね。要するに新宗教の歴史(宗教史としても社会史としても)を分析しています。新宗教が成立するためには社会状況の変化や法的環境の変化の影響を大きく受けますが、それに対する新宗教の組織形態や活動内容などの変化を検討してる本です。

どのような宗教であろうと、宗教にはそもそも信者を集めるためのシステムが必要です。信心は新宗教にありがちな超常体験や治療から得られたとしても、それが組織化され、継続されるためには集合的な意識が働かなければなりません。その点、新宗教はその時点での社会状況の影として成立するという観点から本書は論述されています。

影は決して後ろ向きにのみ伸びるものではなく、横にも、ひょっとしたら前にも伸びます。新宗教は時代の求めているものを先取りしている可能性もあるという主張がなされていますが、著者は本書で学者らしさを決して失うことはありません。つまり新宗教に対してきわめて客観的で冷静に接しています。その分主観的で扇情的に新宗教に接するジャーナリズムに対する著者の態度は辛辣ですが、マスメディアも時代の求めているものを提供する社会的機能を持っていますから、マスメディア論を別に考えなければならない本でした。

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