2008-10-16

ほんとに「いい」と思ってる?

ほんとに「いい」と思ってる? (角川文庫)』(姫野カオルコ)を読みました。以前『ツ、イ、ラ、ク』を読んで「この作者はただ者ではない」と感じたので、新古書店に行って105円の棚に並んでいる本を全て買ってきたのです。まずは処女作から読もうかと思うのが常ですが、『ひと呼んでミツコ』がなかったので、とりあえず軽くジャブでもというつもりでエッセイである本書を読みました。

想像していた以上に濃い人でした。映画にしても本にしても、嗜虐的マニアックというか、とにかくディープ。そして『ツ、イ、ラ、ク』を読んだときに僕の感じた違和感も解消されました。僕の違和感は、小中学生がよくこんな事を考えているものだ、というものでしたが、姫野さんは子どもの頃のご自分を非常によく覚えているのですね。僕は忘れたり作り話をしたりしていますが、姫野さんはどうやら生々しく記憶しているようです。それに年齢や性に対する感受性もずいぶん僕とは異なっていることがわかって(当たり前ですね)、感心した次第です。

僕もよく他人や身内からマニアックだの気難しいだの扱い難いだの感性が変だの言われますが、姫野さんのエッセイを読むと、僕がものすごく凡庸な人間であることを思わされます。単なる考え方の違いかも知れませんが、僕は中庸を尊重するけれども姫野さんはものすごく尖っているからこそ、小説あるいは創作活動という道を選んだのかも知れないな、などと我が身を鑑みてしまいます。いや、器が違うのは重々承知で。

で、ようやく本書の話ですが、エッセイの常としてあっという間に読み終わってしまいました。うんうん、なるほど、そう考えているのね、という感じです。尖ってはいますが、理解できないほどには尖っていませんし、とても理路整然とした文章ですので理解はしやすいです。共感できるかどうかはさておき(ちなみに結構同じ意見が多かった)。小説家だからこそなのか、文庫書き下ろしエッセイにしてはとても手がこんでいますので、著者の苦労が偲ばれました。

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