2008-10-29

『秘密結社』

秘密結社―世界を動かす「闇の権力」 (中公新書ラクレ)』(桐生操)を読みました。世の中が大きく動くときには、その裏で秘密結社が動いているということを縷々書き綴っています。ここまでトンデモな内容の新書は他にはないだろうと思いました。

本書の序章は次のようにはじまっています。

秘密結社ほど、謎と神秘に包まれたものはない。これまで日本では、イルミナティ、フリーメーソン、三百人委員会、円卓会議などなど、秘密結社について興味本位に扱われることはあっても、それについて表向きに語られることはあまりなかった。だが、これほどの巨大勢力がこれまで表面に顔を出さなかったのは、むしろ不思議なくらいである。

世の中に陰謀論は多いけれども、秘密結社による陰謀という話は事欠きません。そしてそれらは大抵ソースをたどると訳のわからないことになってしまい、結局は秘密なのか妄想なのか判断できないものです。本書も「興味本位に扱われることはあっても」と序章のはじめで書かれていながら、結局は興味本位に秘密結社を扱い、その情報のソースは明らかではありません。巻末の参考文献を見ると色々と参照しているようですが、どの記述は何を参照しているということが本文中では一切明記されていませんし、参考文献の記述が正しいかどうかもきわめてあやふやです。

ですが本書の優れた点は、文末かセンテンスの最後のほとんどが「という」「といわれる」「と思われる」などと書かれていることで、つまりはほとんど何もはっきりと書かれていないことです。決して嘘ではないので、正直な態度と言えば正直です。

本書は小説などを構想するにはかなりよい資料かも知れません。話のネタにするにはよい本だと思いますが、あくまでネタであり、真か偽かと言われれば「判断不能」としかいえません。この「判断不能」というのは陰謀論などのトンデモ説には都合のよい結論で、「ない」ことを証明することは難しいからとりあえず「ある」ということになってしまうのですね。本書には歴史的事実もおそらく多く書かれていることでしょう。そしてレトリックは優れていますので、肝心の結論は決して論証できないようになっています。ですからトンデモ説がとりあえず「ある」ことになってしまっています。

こういう陰謀論を論駁するのは難しいことですが、好例は「フライング・スパゲティ・モンスター教」だと思います。ラーメン。

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