2008-10-10

美人の時代

美人の時代 (文春文庫)』(井上章一)を読みました。『おんな学事始』として文春から出ていた単行本が、文庫化で改題になった著作です。色々な雑誌に載せたエッセイをまとめたもので、初出は1990年前後ですから、エッセイに描かれる社会背景も言葉や風俗もかなり古い感じがします。

井上章一さんといえば、博識かつ頭脳明晰で、なおかつとてもエッチなおじさんですが、彼の『美人論』を読んで衝撃を受けたのは大学生の頃でした。『美人論』は歴史研究として書かれたものですが、この本がフェミニズム系の攻撃を受けなかったのは「こういう事が歴史的に事実と考えられる」と実証しているだけだからだと思います。

そして本書は『美人論』とはうって変わって、笑いをとることを密かに狙ったエッセイ集です。著者の欲望や妄想や何やらが丸出しで、学術書ではないから論理的破綻も多く、議論も終始一貫していません。それでもなるほど納得と思わせてしまうのが、著者の頭の良さなのか、僕が男性でなおかつエッチだからなのか。

内容紹介を「BOOK」データベースから引用します。

男はなぜセーラー服に欲情するのか、白衣の天使・看護婦のエッチサービスは解禁すべきか等々、誰もが悩んだ永遠のテーマを真面目に考察し、男のホンネ(女はやっぱり美人に限る、面喰いのどこが悪い)に知的かつ歴史的根拠(美人なくして近代化なし)を与えてくれる痛快丸かじりのエッセイ集。井上美人学の原点、ここにあり。


笑いをとるといっても、単なる冷笑ではなく、著者はフェミニズム陣営からマゾ的な蔑み笑いを求めています。例えば美人コンテスト紛糾の座談会に、美人コンテスト賛成者側として参加して欲しいと上野千鶴子さんからお誘いがあったそうです。「絶対に論破される。もしかしたら謝罪を要求される」と覚悟をしていながら、本音では参加したがっていたようです。というのも、論破され、謝罪を要求され、改宗を迫られて、その後に「それでも、私は美人が好きだ」と呟きたかったからだそうで。もちろんガリレオのパロディです。

読んだのは男性の僕だし、書かれたのが古いからきちんと笑えましたが、笑えない人もいるでしょう。それでも真実の一面は書かれている本です。『美人論』を再読したくなりました。

0 件のコメント: