2008-08-02

わたしが見たポル・ポト

わたしが見たポル・ポト―キリングフィールズを駆けぬけた青春』(馬渕直城)を読みました。一読して、混乱しました。記述は時間も場所も一定せず、民主カンプチア時代のカンボジアには少しも触れられていません。主に伝聞などを基に書かれた、あくまで著者の一人称の視点から見たカンボジア(あるいは元仏領インドシナ)情勢というべきでしょう。

著者の立場はかなり偏向しているように思われます(もちろん、偏向していない人間などいないと思っています)。反米、反ベトナム、時々によって敵対する勢力は変わりますが、一貫して親クメールの立場でファインダーを覗いているようです。親クメールの立場からなら、クメール・ルージュの偏執なまでの民族主義的愛国心は心に訴えるものがあるでしょうが、広く公平にインタビューを行ったり、幅広い歴史資料を参照したりはしていない様子なので、記述を信頼して良いものか悩みます。これもひとつのクメール・ルージュ感である、ということは重々承知していますが、もしもこの本だけを読んだら、片寄った歴史認識になりそうです。

とは言うものの、面白い話も数多くありました。アンコール・ワットの収益はほとんどベトナムに流れているとか、映画「キリング・フィールド」は欺瞞である、などなど。これから「キリング・フィールド」を観る予定ですが、どのように欺瞞であるかよく観察したいと思います。

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