2008-08-16

世界でいちばん幸せな屋上

世界でいちばん幸せな屋上 Bolero―ミルリトン探偵局シリーズ〈2〉』(吉田音)を読みました。本書はクラフト・エヴィング商會の四代目を期待されている(とされる)吉田音さんが書いた(とされる)ファンタジーのような、ミステリのような、童話のような、ちょっとだけ写真集のような分類しがたい本です。

クラフト・エヴィング商會の本を読むのは数冊目(よく覚えていない)ですが、吉田音さんの著書ははじめてです。順番どおりに『夜に猫が身をひそめるところ』から読もうかとも思いましたが、人からこちらをおすすめされたので、まずはこちらから読みました。

分類のしがたい本らしく、感想も書きにくいです。ただスタイリッシュで、幾本もの糸が縒り合わされて、事件らしい事件もなく、それでいて優しくて満足感の残る小説でした。

ファンタジーの伝統に従って時間の飛躍もあります。ミステリの伝統に従って謎もあります。それだけではなく、登場人物(シナモンの彼とか、その上司とか、レコード店の店長とか、ラジオのパーソナリティとか、歌わなくなった歌手とか、もちろん主役級の人物とか)が、とにかく魅力的なのです。この中の一人とでも友達になれたら、ささくれた僕の心も少しだけ優しくなれるのではないか、と思わせるほどに。

一作目も読もう。

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