2008-08-26

数学で犯罪を解決する

数学で犯罪を解決する』(キース・デブリン、ゲーリー・ローデン)を読みました。本書は数学を用いて犯罪を解決するアメリカドラマ「NUMB3RS」の舞台裏となっている数学を解説する本とのことです。僕はドラマを見ないから知らないけれど、ずいぶんな人気のようで。原題は『THE NUMBERS BEHIND NUMB3RS :Solving Crime with Mathematics』です。

僕は実生活にそれほど数学を役立てているわけではないけれども、興味本位で数学は好きですし、物事を抽象化し、モデル化するという面ではそこそこ考え方として役立っているような気がします。実生活の裏側でどれほど役立っているかはよくわかりませんが、きっとかなり役立っているのでしょう。

ところがこの「NUMB3RS」はフィクションですが、どうやら実際の犯罪捜査にも直接的に数学を役立てているケースはあるようで、ドラマの数学的な検証もかなりきちんとしたものとのこと。実際の犯罪捜査に数学が役立つなんてことがありうるのですね。で、解説となっている本書を読みました。地理的プロファイリング、データマイニング、画像エンハンス、ベイズ確率、暗号理論、ゲーム理論、ネットワーク理論、DNA鑑定等々、厳密には数学に属さない(これって統計学でしょみたいな)ものも結構ありますが、それぞれそれなりに役立てている様子です。個人的にはちょっと無理があるかなと思うところもありますが(特に僕はネットワーク理論やゲーム理論関連が好きなのですが「これはちょっと」という内容でした)。

感想といえば、結構初歩的(というか、詳細な説明がされていないからでしょうね)なモデルで役立ててしまえるのだな、ということです。数学はモデルとそこに投入するデータが正確な限り正確な答えを出します。人間の世界はそこまで厳密ではないから、範囲を絞り込んだりある程度曖昧でもよいから補助となればよい、くらいな使われ方のようですが、ちょっとした驚きです。もちろん「NUMB3RS」はまさしく言葉どおりサイエンス・フィクションなので、現実に使われるかどうかというのは可能性として大である、という程度だと思いますが。

あとは、本書で解説されている数学理論はごく一部のエッセンスですし、丁寧な解説があるわけでもないので、わかっているひとには物足りなく、わからないひとにはわからないまま、という感じもします。

それにしても、科学捜査が精密化し、数学まで捜査の応用範囲になってしまうと、古典的アームチェア・ディテクティブなど出番がなくなってしまいそうで、ともするとこれからのミステリは舞台設定がみんな過去になりそうな予感がしてなりません。ちょっと寂しいことなのか、それともミステリで活躍する人種の幅が広がり喜ぶべきことなのか。ちなみに僕は「理系ミステリ」と呼ばれるものではあまり数学は活躍していないな、という感想を持っています。

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